朝のバスの中での出来事です。若い母親と赤ちゃんが乗ってきました。
「このバス、○○病院行きますか?」
「行きますよ。着いたら教えます。」
年配の親切そうな運転手さんでした。
赤ちゃんの具合が悪いのでしょう。母親は赤ちゃんをしっかり抱きしめて立っていました。
通勤時間のため、バスはどんどん混んでいきます。その熱気で乗客も不機嫌そうな様子です。そんな中でついに赤ちゃんが大きな声で泣きだしてしまいました。
母親は周りの冷たい視線に小さくなっていましたが赤ちゃんは泣きやむ様子がありません。
ついに、耐えきれなくなった母親は降車ボタンを押しました。
バス停で降りようとする母親に運転手さんは
「まだ、病院ではないですよ。」
と、声をかけました。
「でも…」母親は戸惑っています。
すると運転手さんはドアを閉め、マイクを片手にこう言いました。
「大変込み合いご迷惑をおかけしております。赤ちゃんが泣きだしてしまいましたが、もう少しご辛抱ください。赤ちゃんは泣くのが仕事です。皆様のご理解をお願いいたします。」
一瞬、車内が静まった後、だれからともなく拍手が起こりました。そして、その母親に席を譲ろうとする人も出てきました。
今の世の中で、「なんで、こんな時間(通勤時間)に子連れでバスに乗るんだろう」「子連れはタクシーに乗ればいい」「混雑しているのに迷惑」などとほかの乗客は思っていたかもしれません。
そんな中で運転手さんの行為が、その場にいた人たちの心に響き、「優しい心、思いやる心」を引き出したのですね。
禅の言葉では「洗心」といいます。
運転手さんの行動が乗客の方々の心を洗ったのですね。
…私たちはいつも誰かのお世話になって生きています。
大人も子供も関係ないですね。今の日本では赤ちゃんを抱えたお母さんがバスを降りることは今の世の中では「常識」だと思われています。実際そうしているママさんたちがいっぱいいます。
日本では「人に迷惑をかけてはいけない」と教育されています。
インドでは「人は誰かに迷惑をかけないで生きることはできない。だから常に感謝し、そして多少の迷惑は許す心を持ちなさい。」と教えるのだそうです。
日本とインドのどちらがいい、悪いという話ではないのです。日本の教えのように迷惑はできるだけかけないほうがいいと思いますし、そういう心遣いも大切だと思います。最近テレビやネットなどではかけられた迷惑?にとても厳しい(寛容でない)話を聞くことが増えた気がします。なので、インドのような教えも必要だと思います…
許すこころで接すれば、自分も周りも楽に生きることができそうな気がします…