『誠一ときたら、高校にも入れない成績だと先生からいわれて……。お母さんは情けなくて悲しくて、生きた心地しませんよ。どうするのよ、これから……』
山田誠一君は、サッカーに夢中なのだ。先生が少しおどかすつもりで、『高校は無理だ』といったのが、逆効果となり、『それなら高校なんか行かないよ』と、誠一君の心を閉じさせてしまったのだ。叔父の山田健太郎さんが、誠一君の心を開く。
『誠一、お前はサッカーの名手だ。身体は人一倍丈夫だ。高校へ行かなくても、叔父さんが必ず整備士の資格を取らせてやる。工場も将来、誠一に全部譲る。学校だけが人生じゃない。学校が何だよ』
誠一君はすねていたのが恥ずかしくなる。叔父さんの整備工場で油まみれで働きだした。叔父さんも約束通り仕事を教えてくれる。『誠一はオレの跡とりたぞ』と誰にもいう。整備士の資格もとり、大型も、特種の免許もとって、誠一君は元気に働いている。そのうえ、サッカーチームをつくってオーナーになっている。
絶望してひねくれていては何も生まれてこない。目の前に具体的に手のとどきそうな目標を示して、そこへ引っぱていかなくては、善の方向へ人々をむけられない。拒んでいるかぎり、真実を生きることは難しい。
赤根祥道氏の著書より抜粋
赤根祥道氏の著書より抜粋